ろ過用途を中心に建材やシリコンなどのフィラーとして、食品添加物である 珪藻土(けいそうど)製品に
関する歴史や工業利用、化学的物質特徴、嵩密度や 粒径などの情報を公開しています。

濾過助剤としての珪藻土

珪藻土自体の詳しい概要や歴史などの説明は【珪藻土とは?】を、化学的な特徴は珪藻土の【化学的特徴】をご覧ください。

多種多様な業種で様々な使われ方をしている珪藻土製品ですが、濾過工程における効率化を目的に濾過助剤として使用される用途が最大の消費量となります。

珪藻土製品は非常に多孔質な構造であるため、固形物は捕捉(キャッチ)し、液体・気体は透過(通り抜ける)します。また、化石由来の珪藻土製品は無機質であり、化学的な安定性を有しています。この特性を利用してビールや醤油から、人類初の抗生物質「ペニシリン」の製造から石油や化学薬品の精製でも使われてきました。この様に、大豆の残渣(大きいもの)から微生物など(小さいもの)から石油や化学物質も捕捉する珪藻土製品は濾過助剤分野では第1選択肢の商品になっています。

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濾過助剤としての珪藻土製品の概要

工業的には0.05mm(50μm)~0.001mm(1μm)の縣濁物質の濾過に珪藻土濾過助剤は優れているとされています。
100年以上、世界中で食品や医薬品業界での使用実績があり、製造上での安全性・品質性能確保は要求され続けており、その要望にお応えし続けています。

珪藻土製品以外の濾過助剤は、火山岩由来であるパーライト濾過助剤と木材由来のセルロース濾過助剤があります。これらは単独で使用する場合もありますが、多くの場合、お客様の濾過条件、濾過要望に適合するための機能性向上を目的に、珪藻土濾過助剤の補助剤として使用されるケースが多いです。
パーライトについては、昭和化学工業HP 「パーライトとは?」を参照ください。

また、珪藻土製品は濾過性能に加え、触媒及び担持性能を向上させる特性があることから、原液に対し反応させたい薬剤などを混合し、分離と反応を同時に行う事ができます。
これは液体だけで無く、気体にも有効であり、実際にごみ処理場で公害物質の気体濾過分野において珪藻土は使われています(詳しくは昭和化学工業提供のクリアエイドページを参照下さい)

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珪藻土製品の濾過助剤としての歴史

珪藻土製品の濾過用途として最初に大規模に使われたのは1886年にドイツ人化学者F.G.ウィヒマンがジャワ島の粗糖工場で糖汁に珪藻土を添加して濾過を試みると高い清澄性(透明に近くなる)を得られる事を発見してからと言われています。

それまで砂糖は細かく裁断されたのち、強い圧力を加えて絞り出したものを煮詰め、乾燥させて作っていましたが、不純物が多いため、茶色く粒度も荒く見た目は泥や土に近い仕上がりでした。

しかし、珪藻土製品を使った濾過方式に変えてからは、効率的に不純物の無い透明な糖蜜(砂糖の原液)の製造が可能となり、不純物を完全に除去する事で味も良くなり、現在の様な真っ白な砂糖が製造可能となりました。

しかし、特筆すべきは見た目や味ではなく、不純物の効率的な濾過が可能な珪藻土製品が登場した事で、工程の効率化(サトウキビを一度煮込んでドロドロに溶かしてしまう方法)が可能になりました。

これにより、都度コンプレッサーで圧縮して絞り出し、カスを捨て、また絞り出すという人力による工程が短縮でき、「原液を液体のまま扱える」様になったのです。これにより、人の手間を掛けずに移動や加工が行えることにより、製造工程の大幅な自動化が可能になりました。

この様な理由でサトウキビから搾り取れる果汁の量も、生産力もすべてが飛躍的に高まった製糖工場の成功例があり、液体を取り扱う多業種に濾過助剤の使用が広まる切っ掛けになりました。例えば、細菌培養液を濾過して作るワクチンや抗生物質、石炭ガス精製や硬化石油製品の製造分野などです。多分野において、珪藻土濾過助剤の使用を前提とした製造ラインが導入された事により、安定的に珪藻土製品の需要が形成され、消費量も拡大の一途をたどります。

この説明項は、濾過助剤としての歴史である為、担持体や塗料、軽量骨材など他用途の動向説明は省きますが、触媒性能については濾過助剤としての機能の一部であり、少し話を触れたいと思います。

1875年の白金触媒による硫酸製造法から始まった触媒分野での珪藻土製品の利用は、1902年のニッケル触媒による硬化油製造法、1908年の鉄触媒によるアンモニア合成法、1914年のアンモニア酸化による硝酸合成法の工業化、そして1923年には混合触媒分野が確立し、化学工業分野で硬化石油、アンモニア、硝酸など現在では欠かす事の出来ない基材生産に使われていきます。

触媒の詳しい説明は【こちら】をご覧ください。

珪藻土製品の触媒分野での使い方は、珪藻土製品自体に触媒物質を混合もしくは含浸させることで、安定した環境で反応を行わせます。無機多孔質構造の珪藻土製品であるため、触媒反応はケーク層を通過時に行う事ができ、更に、触媒反応後は容易に濾過するため、触媒、担持、濾過が同時に行う事ができます。

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珪藻土を濾過助剤として使った場合の基本的な使用方法例

普段の生活で濾過を行うものとして、紙フィルターを使ってコーヒーを淹れる方式が挙げられます。

コーヒーは、コーヒー豆(コーヒーノキの種子)をすり潰して粉末状にした原料に湯を注ぎいれ、コーヒー豆の成分を抽出することで完成します。これを工業的に説明すると下記の様になります。

コーヒー豆「縣濁物質(けんだくぶっしつ)」を入れてお湯を注いたものが濾過対象の「原液」で、ドリッパーが「濾材(ろざい)」、紙フィルターが「濾過助剤」、コーヒーが「濾液」となります。

懸濁物質に湯が加えられ原液が形成、重力により原液が下部に押される形で集まり、濾過助剤で懸濁物質を捕捉し、濾過助剤・濾材を通った液体が濾液として得ることができます。このような重力による方式を「重力濾過方式」と呼ばれます。

また、紙フィルター「濾過助剤」を使用することで、濾過後は紙フィルターを交換する事で簡便的に新たな濾過作業を行う事ができます。

なお、濾過助剤は懸濁物質の大きさに応じて品種を選択し、珪藻土濾過助剤は0.05mm(50μm)~0.001mm(1μm)のサイズに対応したラインナップがあります。

もし、この方式で濾過助剤を使用しない場合は、次の2つの問題が発生します。             

・紙フィルター「濾過助剤」を使用しないでコーヒーを淹れると、ドリッパー「濾材」からコーヒー豆「縣濁物質(けんだくぶっしつ)」が抜け落ち、満足なコーヒー「濾液」を得る事ができない。

・ドリッパー「濾材」をコーヒー豆「縣濁物質(けんだくぶっしつ)」の細かさの穴に変更し濾過を行うと、ドリッパーに目詰まりが発生し、紙フィルター「濾過助剤」を使用しない場合と同様に、満足なコーヒー「濾液」を得る事ができない。

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濾過助剤の効果と使用方法

濾過とは、濁度の高い原液から固形物を分離して清澄な濾液を得る技術のことで、食品工業、化学工業、医薬品など幅広い分野に応用されています。

各産業における濾過工程で当社の濾過助剤を使用すると、①濾過の継続時間を飛躍的に延ばす、②処理速度をより速くする、③より清澄度の高い濾液を得る、といった3つのメリットが得られます。

それは、濾材表面に濾過助剤の層を形成後、原液にも濾過助剤を添加して濾過を行うという簡単な方法で、濾過装置に大きな変更を加える必要がありません。

濾過効率のイメージ

■濾過助剤を使用しない場合

懸濁物質が濾材から漏れやすく、清澄度の高い濾液を得ることが困難です。また、濾材が懸濁粒子の目詰まりにより汚染され、濾過後のケーク剥離や洗浄に手間がかかります。さらに、濾過の進行と共に形成されるケークが濾過抵抗を急激に増大するため、濾過速度が著しく低下し、短時間の濾過操作を余儀なくされます。

■プリコート

濾過操作前に、濾布や金網などの濾材の表面に濾過助剤の層を形成させることを「プリコート」といいます。プリコート層は濾材よりも緻密な構造を持ち、ここで原液中の懸濁粒子は完全に補足されて濾液に漏れることはなく、また、濾材の目詰まりが防止されるのです。さらに濾過後のケーク剥離も容易に行うことができます。

■ボディフィード

もう一つの使用方法は、原液に濾過助剤を投入して分散させ、この液を濾過する「ボディフィード」と呼ばれるものです。こうすれば、濾過の進行と共に形成されるケークの濾過抵抗は低く抑えられるため、速い濾過速度を維持したまま、長時間の濾過操作を行うことができます。このボディフィードは、一般に左記のプリコートと併用して行われます。

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パーライトやセルロースとの違い

濾過助剤は珪藻土製品の他に、火成岩を主原料にしたパーライト濾過助剤と、木の繊維を加工したセルロース濾過助剤があります。パーライトは針状球体構造で軽い(嵩密度が大きい)という特徴があります。このため、濾過量を多く得る事を最重要視される場合は、パーライト濾過助剤は嵩が大きいため、有利に働く場合があります。しかし、粒子表面が滑らかである為、縣濁固形物の捕獲率では珪藻土濾過助剤に劣ります。

セルロース濾過助剤は、木材セルロースを粉末化したものです。特徴としては、有機質であるため濾過作業後に燃焼廃棄が可能であること、繊維質であるため、珪藻土濾過助剤と混合してお使い頂くとケークの強度が増す効果があります。

珪藻土濾過助剤は、パーライト濾過助剤・セルロース濾過助剤よりも広い濾過対象のサイズに対応しており、第1番目の検討に挙がりますが、お客様の濾過条件、重要視される事項によって、パーライト濾過助剤、セルロース濾過助剤と組み合わせて濾過を行う事で、更に経済合理的に濾液を得ることができる可能性があります。

★★当社は、珪藻土濾過助剤、パーライト濾過助剤の製造販売、セルロース濾過助剤の販売を行っており、お客様の状況に応じて、お客様に最適な濾過方法のご提案が可能です。

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濾過用途に応じた珪藻土濾過助剤グレード

珪藻土濾過助剤は、濾過対象のサイズ、濾過条件に応じて、濾過助剤の粒度毎のグレード、酸で洗浄した特別グレードなど、数十種類をご用意しています。濾過助剤を検討頂くにあたっては、濾過速度と清澄度の二つの切り口があり、この二つの性質は常に相反した結果となります。

粒度の粗いグレードの濾過助剤は濾過速度が速い反面、濾液の清澄度が出ない傾向があるため、粘性の高い油脂類などの濾過の場面において効果を発揮します。

粒度の細かいグレードの濾過助剤は濾過速度が遅い反面、濾液の清澄度が良く出る傾向にあるため、除去対象物質が小さい酵素の培養液などの濾過において効果を発揮します。

実際の濾過工程においては、濾過助剤の使用方法である、濾材の目詰まり防止を主眼においた「プリコート」、濾過量を得ることを主眼においた「ボディーフィード」にて、異なったグレードの濾過助剤を使い、濾過速度も濾過量も最適なバランスで実現する事が可能です。

★当社は、当社所属の研究員による濾過助剤選定サービスを提供しており、お客様に最適な濾過方法の提案を行っております。

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